ミルトスの木かげで

旧はちことぼぼるの日記

God Bless you!!

まことのいのちを得るために…
……so that they may TAKE HOLD OF THE LIFE THAT IS TRULY LIFE.
(第一テモテ6章18節 写真はミルトスの花)

予想外の就任演説

 私は暖かい部屋で気持ちよいソファに寄りかかりながら聞いていたけれど、ワシントンDCは氷点下8度ほどの寒さだった。風もあり、体感温度はどれほど低かったことだろう。しかしモールに集まった百万人以上の人々は、寒さなどおかまいなしだったようだ。
 オバマ大統領の演説は、ある意味予想外だった。というのも私は、オバマ氏は聴衆が湧き上がるような名台詞を決めて、その場を拍手の渦に巻き込み、とにかく人々を熱狂させるような演説を聞かせるのではないかと思っていたのだ。多分その場に集まった人たちも、ジャーナリストたちも、聴く者が一斉に盛り上がるような、狂喜して拍手大喝采が湧き上がるような、そんな決め台詞を期待しながら彼の演説を聞いていたに違いない。その意味で、彼の演説は予想外だったのだ。
 昨日の彼の演説にはいわゆる「レトリック」がなかった。非常に厳粛で、冷静で、現実を直視し、未曾有とも言われる世界的危機に直面している時に大統領に就任した者としての責任を、彼がしっかりと噛み締めているのが感じられた。そしてこの危機を乗り切るための責任は彼一人のものではなく、国民一人一人も心して負うべきものであるということを、聴衆にはっきりと語っていた。
 47歳という若い新大統領から出た言葉は、古今東西の文化が良しと認めてきた、実証済みの価値観を再確認するものであり、国民一人一人に、各人の責任と覚悟を呼びかけるものでもあった。我々の成功は、誠実や勤勉、勇気、公正、寛容、好奇心、忠誠心、愛国心にかかっている、今までの自分たちのやり方で、うまくいかなかったものはいさぎよく手放さなくてはならない、いつまでもつまらない不平を言い続けたり、偽りの約束にしがみつくのはやめよう、聖書も「子供じみたことは終わりにしなさい」と言っているように、今、我々は立ち上がり、アメリカを再生するために自分がなすべきことを行い始めるのだ、これからは新しい責任の時代だ… 
 もちろん彼は、ビジョンを掲げることも忘れてはいなかった。アメリカの歴史を語りつつ、建国の理念に立ち返るアメリカの理想の姿もしっかり描いていたと思う。
 理想と現実のバランスを取り、基本に立ち返りつつ、我々が求める結果を実際に生むことのできる事柄を行なうよう国民を励まし導く… これぞオバマの真髄か、と思った。
 彼の演説は、あまりにも厳粛で、それを聞いた時はとても盛り上がるどころではなかったけれど、あとからじっくりとトランスクリプトを読み返すと、その一言一言の重さと意義深さがぐっと心に染みて、心の奥からじわじわとこみ上げてくるものがある。
 もし彼が予想通りの演説をしていたなら、一部の批評家が選挙期間中に言っていたように、彼は現実の厳しさをわかっていない「甘ちゃん」の理想主義とレトリックだけの新米政治家に過ぎなかったかもしれない。しかし、昨日の彼の演説は、そうではないことを証明したと思う。歴史に残るような「決め台詞」、心をかき立てられるようなレトリックを期待していた人には予想外だったろう。期待外れでがっかりしたかもしれない。しかし、予想していたよりはるかに深遠で重要なメッセージを、国民は確かに受け取った。…と少なくとも私は願いたい。

 オバマ大統領は国民を励ましつつチャレンジした。国民一人一人がそれに応え、自分の責任を担って立ち上がることができますように。主よ、お導きください。
 

 For as much as government can do and must do, it is ultimately the faith and determination of the American people upon which this nation relies. It is the kindness to take in a stranger when the levees break, the selflessness of workers who would rather cut their hours than see a friend lose their job which sees us through our darkest hours. It is the firefighter's courage to storm a stairway filled with smoke, but also a parent's willingness to nurture a child, that finally decides our fate.
 Our challenges may be new. The instruments with which we meet them may be new. But those values upon which our success depends - hard work and honesty, courage and fair play, tolerance and curiosity, loyalty and patriotism - these things are old. These things are true. They have been the quiet force of progress throughout our history. What is demanded then is a return to these truths. What is required of us now is a new era of responsibility - a recognition, on the part of every American, that we have duties to ourselves, our nation, and the world, duties that we do not grudgingly accept but rather seize gladly, firm in the knowledge that there is nothing so satisfying to the spirit, so defining of our character, than giving our all to a difficult task.(演説の最後の方の、◆新しい責任の時代◆の部分)

ホーム日記ミルトスの木かげで(最新)