ミルトスの木かげで

旧はちことぼぼるの日記

God Bless you!!

まことのいのちを得るために…
……so that they may TAKE HOLD OF THE LIFE THAT IS TRULY LIFE.
(第一テモテ6章18節 写真はミルトスの花)

ふと思い出したこと/節目

 去年の夏、ま〜やとケンを連れてプールに行った時のこと。もう子供たちは泳げるので、以前のように自分も半分水の中につかって子供の監視をする必要がなくなり、のんびりプールサイドに寝そべって本を読んでいた。

 「はちこ? はちこじゃない?」

 声をかけられ顔をあげると、そこには以前行っていた教会で仲良しだったヴェラがいた。ヴェラに会うのは久しぶりだったので、早速お互いの生活について、しばらくの空白を埋めるべく分かち合った。
 ヴェラにはエミより6歳くらい年上の一人っ子の息子、マークがいる。ヴェラはマークを大切に育て、小学校から高校まで、少し離れたところにある私立のキリスト教系の学校にやり、高校卒業後もヴェラの強い希望により近所のキリスト教系の大学に進学させた。ところがマークは、3年生になる前に大学をドロップアウトしてしまった。ヴェラは怒ったものの、彼は「僕は最初からこの大学には行きたくなかったのに、お母さんが無理やり行かせたから行ったんだ。だけどもう21歳になるから、僕は自分のやりたいようにやるよ」と言って家を出たそうだ。ヴェラはそれはそれは嘆いたけれども、大人になった息子にひもをつけて、自分のそばにつないでおくわけにはいかない。一人息子に出て行かれてしまい、彼女の心はすっかり意気消沈した。
 そもそも、マークは決して問題児などだったわけではなく、むしろ親子関係も良かった。中学高校時代はユース活動にも熱心で、主の道をしっかり歩んでいた。ただ、ヴェラがあんまりマークのことで世話を焼き過ぎている様子に私も見かねて、マークが高校のシニアの頃、やや手遅れかと思いつつも『Boundaries with Kids』を貸してあげたこともあった。
 マークが大学をドロップアウトしたところまでは、実はすでに、その前にヴェラに会った時に聞いていた。この日の話はその続きだった。ヴェラは相変わらずメソメソしていた。どうしたのかと思ったら、マークが秋からアイオワ州立大学に編入することになったという。しかも、編入に先立ち、マークはアイオワに半年以上だかバイト生活をしながら一人でアパートを借りて住み、アイオワ州民として認められるだけの在住日数を獲得し、州民として大学編入できるようにしたという。州立大学は、その州の住人だと安い学費で済むが、州民でないと、私立大学並みの学費になる。
 「良かったじゃない、大学に戻ることになって! しかも、それだけ自分で考えて、親の世話にならずに自分で学費を捻出するなんて、ものすごく偉いわよ! 素晴らしい! You should be proud of him!!」私はマークの立派な成長ぶりに感嘆し、喜んだ。
 率直な話、親に反抗して家を出て、そのまま道を外しっぱなしになってしまう若者は少なくないと思う。戻って来るまでに、何年もの長い年月がかかるケースも少なくないかもしれない。しかしマークは違った。確かに一時期は飲酒とか、いろいろ遊んだ時期もあったらしいが、しっかり自分の将来を見据え、自分に必要なことを選び、それを実行した。本当に偉いと思う。
 しかしヴェラは、「アイオワに行っちゃうなんて…」とメソメソしている。気持ちはわかるけど、もうこれ以上、息子を自分の手の中に握りしめるわけにはいかないのだ。
 「ヴェラ、マークは大人になったんだよ。立派な大人になったんだよ。ちゃんと、巣立たせてあげなくちゃだめだよ。親子関係っていうのはね、世の中の人間関係の中で唯一、うまくいった暁には、別離が待っているものなんだって。他の人間関係は、うまくいけばますます近くなるけれど、親子関係だけは、究極のゴールは別離なんだって。理不尽だよね。だけど、それが育児なんだって」
 いつの間にか、私たちは二人とも涙ぐんでいた。私も、自分の子供たちが巣立つ日のことを思えば人ごとではない。ヴェラに言いながら、自分自身にも言い聞かせていた。
 「はちこだって、もうすぐエミが大学でしょ。その時が来れば私の気持ちもわかるわよ」
 「うん、そう思う。私もきっと大泣きするかもしれない。その時には、今度はあなたが私を慰めてね」
 私たちは、プールサイドで泣きながら抱き合った。

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 最近、妙に自分の育児を振り返らされている。
 エミが高校卒業を3ヶ月半後に控え、私にとっても、ひとつの節目なのだと思う。何が何だかわからないままに、ただ神様の恵みによってここまで育ててきた。まだ下に三人いるから、私の育児は当分終わらないけれど、エミの高校卒業は私にとって、旧約聖書的に言えば「記念碑」を建てるに値するような、一つの区切りなのだ。

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