ミルトスの木かげで

旧はちことぼぼるの日記

God Bless you!!

まことのいのちを得るために…
……so that they may TAKE HOLD OF THE LIFE THAT IS TRULY LIFE.
(第一テモテ6章18節 写真はミルトスの花)

コズミックフライヤー

 ケンはちょっと前に、「コズミックフライヤー」というラジコンの飛行機をパパに買ってもらった。随分前からおねだりしていて、なぜかパパの誕生日(5月25日)になったら買ってもらうという約束を取り付け、その日をずっと楽しみにしていた。数ヶ月待って、ようやくパパの誕生日になり、一緒にパソコンの前に座ってコズミックフライヤーをネットで注文した。(私が「どうしてあなたの誕生日にケンがプレゼントを買ってもらうわけ?」と聞くと、「いいんだよ、俺も、息子と一緒にラジコンの飛行機を飛ばすということを、一度やってみたかったんだ」と彼。)そして、注文した品が届くのをケンは毎日心待ちにしていた。しかし届いたのはパパの実験室のオープニングの2日前で、パパは超忙しかったため、すぐには箱をあけてもらえなかった。ケンスケは一生懸命我慢して、箱の外からコズミックフライヤーを眺めて、パパと一緒にそれを飛ばす日を楽しみにしていた。オープニングの次の日の土曜日、ケンは約束通り、飛行機の箱を開けてもらい、組み立ててもらった。しかし一刻も早く飛ばしに行きたかったけれど、パパはまだ疲れが残っていて、外には連れていってもらえなかった。壊したらいけないからと、夢にまで見た飛行機に触らせてもらうこともなかった。日曜日の午後には、と期待していたのに、今度は大雨が降ってしまい結局外には出れずじまいの週末だった。
 今朝になってついに、仕事に行く前のパパが、「よし、今なら公園も空いているし、今飛ばして来よう!」と思い立ち、まだ寝ていたケンを叩き起こしてコズミックフライヤーを抱えて二人で公園に向かった。普段なら寝ているところを起こされるとご機嫌斜めになるケンも、今朝ばかりは大喜びで飛び起きた。
 ところが。10分もしたら二人はもう戻ってきた。ケンは「ママ、ママ、あのね、飛行機ね、高い木の上にひっかかって、取れなくなっちゃったの。」
 ケンの後に続いて戻ってきたパパに私は「木にひっかかっちゃったの? 登って取ってくればいいじゃない?」
パパ「登ってなんか行けないくらい高いところにひっかかったんだよ」
はちこ「じゃあ、これでもうおしまいなの?」
パパ「そ。これでおしまい。」
 私はあっけにとられてしまった。ケンを見ると、泣きもせず、駄々をこねることもなく、私の手をぎゅっと握りしめて、ただ黙ってじっと耐えている。あんなに長いこと、ずっとずっと楽しみに待っていたのに、たった10分でおしまいだなんて。
 ケンは「ママ、あとで一緒に公園に行ったら、どの木にひっかかったのか、教えてあげるね」とだけ言うと、うつむいた。なんて可哀想な。けなげで、いじらしい。普段なら、気に入らないことがあるとわりとすぐにかんしゃくを起こす方なのに。
 「ちょっとあなた、なんとかしてあげてよ、可哀想じゃないの。」私がそう訴えると、彼はケンを抱き上げ、ひそひそと男同士の会話。 ケンは「うん、うん」とうなずき、最後には「Yeah!」と嬉しそうな笑顔を見せた。もう一機買い直して、あと一回だけチャレンジしてみよう、今度はうまくやろうな、と約束したらしい。

 それにしても、一体なんなのでしょう、このラジコンの飛行機というやつは。初心者だと、最初の5分か10分で墜落して壊したり木にひっかけたりしておしまいになってしまうことはよくあることらしい。それでもそんな虚しい遊びを男の子はやってみたいと思うのでしょうか。今朝のケンをみながら、こうやって男の子は精神的な逞しさを身につけていくのかなと思った。一瞬にしてはかなく消えてしまう夢かもしれなくても、それでも自分が目指したなら失敗を恐れずにやってみる。どんなに忍耐し、努力し、それでも結果が出せないことがある。それもまた良し。もう一度チャレンジするまでよ、と立ち上がることを、こうやって学んでいくのでしょうか。一生懸命頑張れば、いつかは必ずうまくいく、というのは実は幻想。どんなに頑張ってもうまくいかないことがあるのが人生の現実。その現実を見据えた上で、それでもあえて挑戦し続ける強さ。逞しさ。
 失意の中にあってもじっと耐えていたケンスケは、とってもかっこ良くて、頼もしかったよ。I love you!

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コズミックフライヤー、後日談はこちら

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