ケンの友達のこと
今年のシカゴの4月はとても陽気がいい。庭の姫リンゴもそろそろつぼみが膨らみ始めている。例年は5月に入ってからだから、これは早い。今年はなんだか春が長くて嬉しい。
ケンスケは最近、近所に住む同い年のダニーと仲が良い。しょっちゅう一緒に遊んでいる。ダニーの家に遊びに行った二日前のこと、夕食の時間、ケンが突然こんなことを言った。
「ダニーのお母さんは、もうダニーのお父さんのことが好きじゃなくなったから、お父さんはもうすぐ引っ越すんだって。」
「ダニーが、お母さんがおかしなことを言うって言うんだ。子供たちには荷造りしなさいって言うのに、自分は全然荷造りしないんだって。」
思わず、パパ、エミ、みんと私の4人で顔を見合わせた。(ま〜やは、いまいちピンと来なかった様子。)胸がキュッと痛んだ。実はほんの2週間前ほど、ダニーの家の前にパトカーが3台ほど止まっていて、ダニーのお父さんが後ろでに手錠をかけられ連行されるのを、偶然通りかかったぼぼるパパが目撃していた。何が起きたのかわからないのだから勝手な憶測はしないけれど、何かあるんだろうなと心の片隅で気にしていた。その後、教会のエッグハントに誘ったら、お母さんは3人の子供たちを連れて嬉しそうに来てくれた。公園とかで会ってもいつもニコやかだし、庭仕事に精を出している様子だし、あの日のことを目撃していなければ、とても何かあったとは思えない感じなのだけれど…
たった5歳の少年が、家庭で何が起きているのかその意味はよくわからないまま、ただ自分が見て感じたことを、友達に何となく打ち明けてみたんだなぁと思うと、とても切ない。ああ神様、ダニーとダニーの兄弟を、この状況の中にあってもお守りください。この御家族の上に、あなたの光が届きますように。