ミルトスの木かげで

旧はちことぼぼるの日記

God Bless you!!

まことのいのちを得るために…
……so that they may TAKE HOLD OF THE LIFE THAT IS TRULY LIFE.
(第一テモテ6章18節 写真はミルトスの花)

Dorodangoその後

 泥だんごについていろいろリサーチしたケン、当然自分でも作りたくなって、早速きのう、庭の土を掘り起こした。ガレージにあった古い網戸をつかって土をふるい、混ざっていた石ころや草の根や木屑などを取り除く。その土に水を加え、ドロドロにしてボール状に丸め、丸くなったら、表面に乾いた土を被せ、余分な土は指で軽く払う。それを何度か繰り返すと、今度は30分くらい寝かせて水分を蒸発させ、湿った表面には再び乾いた土を表面にかぶせる…というプロセスを繰り返す。そのうち、玉はだんだん堅くなってくる。私は半信半疑だったけれど、本当に堅くなってきて、ケンは大満足。一晩寝かせたあと、今日もさらに土をかぶせ、いよいよ磨く段階に入った。柔らかい布で少し磨いてみたら、ちょっとヒビが入ってしまったけれど、確かに光りだし、「完璧じゃないけど、ボクの最初のdorodango、大切にするぞ!」と大喜びだった。
 ところが、事件はその後に起こった。
 あと少しで完成というところまできた泥だんご。家の前でケンが作業をしていたら、家の向かいにある公園に友達やほかの子たちがやってきた。ケンは、dorodangoを友達に紹介すべく、完成間近のそれをもって、公園に行った。
 ところがその子たちは、ケンがどれだけ丹精こめてその泥だんごを作ったのか、理解すべくもなく、面白がって、ケンの手から泥だんごを奪いとった。止めるケンの声を無視し、子どもたちはその泥だんごを投げた。そして、それは地面に落ち、壊れてしまった。
 ケンは怒った。カンカンに怒った。
 実はこういうことになっていたとき、私は家で昼寝をしていた。(だから時差ぼけが直らないんだよ…)でも、ドアのバタンという大きな音と、ケンの激しい嗚咽が聞こえてきて、びっくりして目が覚めた。慌てて階下に降りていくと、ケンが「They broke my dorodango」と泣きながら、洗面所で手を洗っている。「どうしたの?」と尋ねると、「タイラーとアイザックがボクの泥だんごを取って、投げて、壊しちゃったんだ。」と嗚咽しながら言う。そしてソファに突っ伏して泣いている。
 昨日から、ケンがどんなに思いを込めてそれを作っていたか、そして完成間近で、どれだけ楽しみにしていたかを知っている私は、胸が痛んだ。他の子たちには、もちろんそんなことは分からなかったのだろうし、ちょっとふざけて取り上げて投げただけのつもりだったのだろうが…
 私も腹がたったし、その子たちに、泥だんごがケンにとってどれだけ大切なものだったのか説明しなくては、という思いになり、公園に足を運んでみた。
 私は、アイザックのことはよく知っているが、タイラーが誰かは知らない。公園に行ったら、5人くらいの子どもがいて、私がやってくるのに気づくと、みんな私を凝視した。アイザックはその中にいなかったので、私は「タイラーはいる?」と聞くと、みんな首を横に振る。その子たちは、ケンとケンの友人たちとのトラブルに直接関係なかったようだが、ケンたちの間で何が起こったのか見ていたらしく、私が状況を教えてくれる?と訊くと、口々に説明してくれた。それで得た新しい情報では、子どもたちがケンの泥だんごを投げて壊した後、ケンはカンカンに怒り、壊れた半分の泥だんごを、その子たちに向かって投げたらしい。そしてそれが、その子たちの一人、ジェシーの腕に当たって、血が出たという。私はそれを聞いてちょっと慌てた。いくらその子たちがケンを怒らせたと言っても、ケンが怪我をさせたとなると、問題だ。どの程度の怪我なのか、ジェシーに会って確認したほうが良さそうだと思った。
 私はその子たちに礼を言うと、ジェシーやアイザックたちを探しに出かけた。アイザックの家はうちのすぐ近くなので、まずそこに行くと、アイザックはおらず、お兄ちゃんのパトリックが出てきた。パトリックに事情を説明すると、そこから数件先の家を指さして、「今、あそこにいるはずだ」と教えてくれた。それでその家に行くと、大人が出てきたので、「ジェシーのお母さんですか?」と訊くと、「いいえ、私はベビーシッターなんです」。
 彼女も、ケンたちのトラブルが起きたとき、一緒に公園にいたらしい。「ケンが投げたものが当たってジェシーが腕から血を出したと聞いたので、様子を見に来ました」、と言うと、「いいえ、血なんか出ていません。全然大丈夫ですよ」と言う。
 彼女も、子どもたちがケンのものを奪って壊してしまったことで非常に恐縮しており、私に謝ってくれた。また、アイザックは大切な友達であるケンを怒らせてしまったことをとても気にしている、と教えてくれた。彼女は私を家の中に招き入れてくれたので、子どもたちに会うことができた。まずジェシーにケンが投げた泥だんごが当たった腕を見せてもらった。全然何ともなっていなかったので安心した。ジェシーには、私からも謝った。子どもたちも、悪気はなかったものの、自分たちがふざけてやったことがケンを傷つけてしまい、皆申し訳なく思っている様子だった。特にアイザックは泣きそうな顔をしていたので、「大丈夫よ。ケンはアイザックのことをちゃんと赦してくれると思うから、心配しないで」と彼の頭をなでながら私が言うと、彼はヒクヒクッと泣き声をあげて、うなづいた。ベビーシッターさんが「ケンに謝りに行く?」と聞くと、みんな、「うん!」「友達同士でも、ケンカしたり誤解が生じて仲違いしちゃうことはあるよね。大切なのは、そういうとき、ちゃんとお互いに謝って、和解することだよね」と私が言うと、子どもたちは、「和解って何?」「ごめんなさいって、謝り合って、赦し合って、もう一度仲良くすることだよ」。つい日曜学校モードになってしまう私。(笑)

 私は、家で一人泣いているケンの様子を確認するために、一足先にその場を後にして家に向かった。帰ってみると、案の定ケンはまだ泣いており、「みんなケンに謝りたいって言って、これからうちに来てくれるよ。仲直りする?」と訊くと、「いやだ!」と言って、クローゼットの中に隠れてしまった。これでケンが笑顔で出て来てくれれば万事めでたしなんだけど、さすがにそう簡単にはいかない。でも、彼の悔しさを思えば無理もなかろう。 
 そこでケンのことはそのままそっとして、ちょうどうちに到着した子どもたちには、「ごめんね、ケンはまだupsetしていて、会いたくないって言ってるの」。そして、彼らをガレージに案内し、ケンの泥だんご工房(?)を見せ、泥だんごの作り方を説明してあげた。「dorodangoは日本の子どもたちが生み出したアートで、単純だけど、時間をかけて丁寧につくれば、すっごくクールなんだよ! ケンはね、それがもう少しで完成するところだったのを壊されてしまって、それでとっても傷ついちゃったの。今度、みんなもケンと一緒にdorodangoを作るといいね」と、プチ文化交流。ベビーシッターさんは、私に何度も礼を言ってくれた。私も礼を言い、彼女がちゃんと話の分かる人でよかったと思った。主の憐れみを感じた。
 正直言って、私がここまで介入していいのだろうか?という思いはあった。基本的に、子どものケンカは子ども同士に解決させるべきだし。でも、誤解の解き方とか、和解の仕方とか、ある程度子どもに見本を見せてあげることは必要な気がしたし、同じコミュニティー内の大人が、愛情をもって子どもたちに関わってあげる姿を見せるのは悪くなかろうと思い、今回はあえて介入した。祈りながらのことでもあり、これでよかったかなと思っている。
 子どもたちが帰ったあと、もう一度ケンとゆっくり話をした。「ケンの悔しい気持ち、ママにはよくわかるよ。ケンがどれだけ一生懸命作っていたか、ママはよく知っているからね。You must be feeling really frustrated and kuyashii. I wonder how you say "kuyashii" in English...」ケンはしゃくりあげながら、「Crestfallen」「何?」「Crestfallen」ケンはその言葉を繰り返すと、パソコンでCrestfallenの意味を調べ、私に見せてくれた。dejected; dispirited; discouragedとあった。ははぁ、なるほど。今ケンは、そういうふうに感じているのか…
 ケンの悔しい気持ちはよく分かるよと、何度もケンの気持ちをvalidateしてあげた後で、「でもね、どんなに怒って当然だったとしても、それでケンがお友達を怪我させたりしたら、それはよくないよね。ケンだって、友達を傷つけてもいいとは思っていなかったでしょう? どんなに怒っても、怒った勢いで取り返しのつかないことをしてしまわないよう、よく気をつけないとね。…」
 ケンは普段は穏やかだけれど、案外気性の激しいところもある。その激しさは、私の子どもの頃を彷彿させる。自分の大切なものを侵されたら、怒るのは当然だし、そういう怒りの感情は、自分の境界線の中にあるものを守るために神様が私たちに与えてくださったもの。怒りの感情そのものを押し殺す必要はないし、そうすべきでもないと思う。でも、怒りに流されて行動するなら、困ったことになるのは自分なのだから、聖書が「怒っても罪を犯さず」と教えているように、怒りの中にあっても、自分の感情に対する自分の反応をコントロールする術を学ばなくてはならない。Feeling anger inside you and acting out in anger are two different things. ティーンになってから困ったことにならないように、今のうちからしっかり教えてあげないと…
 そんな話をゆっくりしているうちに、ケンがもう一度泥だんごを作りたい、今度はママも一緒に作らない?と言い出した。そこで二人で土を掘り起こして、一緒に作ることにした。そして、作業をしながらも、いろんな話をした。ケンは、「Mother-Son momentだね」と嬉しそうだった。
 ああ、主よ、気性の激しいところもあるこの息子を、どうかあなたが助け、導いてください。その過程で、私もなすべき援助を適切に行なうことができますように、どうか助けてください…

 実は夕べは、ミシガンに出かける途中のめぐんちゃんが泊まりに来てくれて、夜中過ぎまですっごく祝された交わりを持つことができて感謝だった。今日はそのことをメモしておくつもりだったのに、午後になってこんな事件が起こったので、ちょっと予定変更。でも、こんな出来事も、親同士としてのめぐんちゃんとの語らいにも関連しているし。夕べのめぐんちゃんとの祝された交わりがあったおかげで、私も今日は、比較的冷静に対応できたのかもしれない。これもまた、主の恵み… 感謝。

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