ミルトスの木かげで

旧はちことぼぼるの日記

God Bless you!!

まことのいのちを得るために…
……so that they may TAKE HOLD OF THE LIFE THAT IS TRULY LIFE.
(第一テモテ6章18節 写真はミルトスの花)

ワークショップの準備

 ふだんは、返事を書かなければならないメールなど週にせいぜい3、4通しか来ないのに、きょうは一日で25通もメールを書いて、てんやわんやだった。というのも、「流体実験を使った大気海洋科学の教授法に関するワークショップ」なるものを来年の6月にシカゴで開催することになり、きょうがそのアナウンスの日だったのである。アナウンスと言っても、いくつかのメーリングリストに情報を流しただけだし、組織委員も私の他にはMITのJohn Marshallしかいないという案配で、当然小規模なワークショップになるのであろうと思っていたら、午前中から問い合わせのメールがびしばし舞い込みはじめ、アメリカはもちろん、カナダ、メキシコ、遠くは台湾からも来ている。大半は資料請求だが、中には、参加したいが金がないので旅費を出せなんていうのもあった。はいはい、ちゃんと旅費サポート用の予算は用意してありますがね、あなたのような熟年の参加者ではなく、若手の教員ないしは学生にあげなさい、というスポンサーからのお達しなのですよ。それに、こう言っちゃなんだが、参加費も取らないつもりだし、バンケットやランチだってついてくるし、夏のシカゴにしては割安の宿泊設備も用意してあるんだから、お得なパッケージでしょ。飛行機代くらいは自分で出してくださいな。てなことをつらつら綴っているうちに、あっと言う間に一日が過ぎた。

 ちょっと嬉しかったのは、日頃交流の多い研究型大学院大学だけではなくて、一般教養課程の4年制大学から多くの問い合わせがあったことだ。一般教養の大学は受講生の数が我々よりずっと多いわりには、物理・化学やコンピューターを除けば教育用の実験設備が整っているところは少なく、今回のワークショップではこのような大学やコミュニティーカレッジ、また高校の先生などにノウハウを提供することも大きな目的なので、この反響には励まされる。正直なことを言えば、うちは研究大学院大学なので、我々の仕事はもっぱら研究成果で測られ、教授法のワークショップなど開いたところで、業績の上ではビタ一文の得にもならないし、自分にその資格があるかもあやしいのだ(わし理論屋だし)。しかし、分野の将来を考えたら、次世代の研究者を育てることが我々の責任でもあるはずで、そのためには、サイエンスは面白いんだぞ、という情熱を伝えていかなければならない。それにはどうしたらいいか?大気海洋の分野に限って言えば、現在、コンピューターの描いた図面や、方程式があまりに幅を利かせていて、ある意味本来の研究対象であるべき自然から乖離してしまっている。かと言って、空だけ眺めていれば気象学を学べるかといえば、もちろんそんなことはない。そこで、本物の自然の雛形である流体実験をうまく利用して、天気現象のエッセンスを「目に見える形」で「数量的に」学ぶことが重要になってくるのだ。いままで、眉唾に思えた天気予報や地球温暖化に関する話も、その現象(のアナロジー)を目の前で見せられれば、「雲をつかむような話」ではなく「サイエンス」として捉えることができるようになる。

 まあ、というわけで、ここの読者には天気予報が趣味のかきごおり先生のような方もいらっしゃれば、少数ながら同業者もいるかもしれませんので、宣伝させていただきます。

 日本からは、「みんなの地球科学(みんちか)」「フラクタル日よけ」で有名な京都大学の酒井敏先生も講師の一人としてお招きしています。

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